橋口勝輝さん(SNSマーケター)

20代までの9割を競泳生活に費やし、インターハイに優勝したことでオリンピックを目指していた橋口さん。競技生活には大学でピリオドを打ち、一度は企業に就職しますが、サラリーマン生活にはなじめず退職。その後、独立してSNSマーケターとなります。
そんな橋口さんは、つい先日会社を設立されたばかりということで、現在進行形での起業話や苦労話を交えながら、SNSマーケティングという比較的新しい仕事の内容などを伺ってきました。
TwitterやYouTubeで情報収集して学んでいるという話をお聞きして、学びのスタイルも変わってきていることを認識したのですが、橋口さんからのメッセージ「時代が変われば常識が変わるので、親世代のあたりまえを鵜呑みにしなくていい」という言葉は、変化の激しい社会における重要な心構えだなと感じました。

プロフィール

27歳
2歳から始めた水泳に熱中し大学4年までの約20年間を競泳に捧げる
2023/3/1に株式会社BRIGHTを設立しました
https://bright-corp.co.jp/

SNSマーケターという仕事

質問 SNSマーケターの仕事について教えてください。

商品やサービスが売れる仕組みを作るのがマーケティングの仕事です。

例えば、田舎の誰も通らないところにカフェをオープンする場合、ネットで発信したり、チラシをまいたり、人に声をかけたりして伝えなければ、お客さんは来ません。マーケターは、お客さんがカフェの存在を知り、来店してくれるには何をすればいいのか?を考え、WEBやSNS、チラシ、口コミや紹介などを組み合わせて提案します。また一度来てもらって終わりではなく、何度も来てくれるリピーターを増やせるよう、その先の仕組みも考えます。

マーケターの中でも、僕はSNSやWEBを利用して、商品やサービス本来の価値を届けられる人達を増やすことを目的に仕事をしていているので、SNSマーケターと呼ばれます。SNSは比較的新しいサービスですので、SNSマーケターも若い方が多いと思います。

クライアントは、僕の場合は飲食店、サロン、スポーツクラブ、ホテル、クリニックなどですね。


質問 日々の仕事について教えてください。

これまで個人事業主として3年やってきたんですが、今月会社を設立したところです。そのため、いまは事務作業ばかりしていますが、普段であれば、営業活動やシステム構築、打合せといったことをメインにしています。

大学までは競泳でオリンピックを目指していた

質問 大学ではSNSマーケティングに近しい領域を学んでいたのですか?

いいえ、僕はスポーツ科学部という、人間の関節の仕組みや、より効率的に競技を行うための体作りを学ぶような学部の出身です。そこでは、卒業してトレーナーや体育教師になるような人が多かったです。

僕は大学までは、ずっと競泳に打ち込んできたんです。体力づくりのために2歳から水泳教室に通い始めたんですが、小学校3年のときのジュニアオリンピックという全国大会で3位になってから、本格的にやり始めました。僕の中で、水泳から競泳になった瞬間です。
中学の全国大会では成果は出せませんでしたが、いくつかの高校からオファーがきて、静岡から愛知の高校に進むことにしました。それで高校から寮生活を始め、インターハイでは個人優勝し、いよいよオリンピックを目指せそうか?という段階までいきました。競泳の強豪である中京大学から声がかかり進学したのですが、今度はスランプに陥ってしまい、1・2年時は決勝にも残れない状態で。3・4年時も、一番良くて5位。
才能やタイミング、めぐり合う人、運。そういったすべてを持っていないと、オリンピックには出られないんだなと知りました。そこで競泳人生には区切りをつけたんです。

インターハイ優勝時のインタビューにて

質問 では新卒のときは、スポーツ科学部におけるメジャーな進路に就職したのですか?

いえ、道路整備をメインにしている会社に、営業職として就職しました。
ぶっちゃけて言うと、スポーツ大学あるあるなんですが、周りの人間もそれまでずっとスポーツ一本でやってきているから、就職活動なんて真剣にやっている人は少なく、自分もほぼしなかった。その会社には推薦で入社しました。

ですが1年半ほど勤めたところで辞めてしまったんです。自分の父親も会社を立ち上げて仕事をしていた人なので、サラリーマンという感覚になじめなかったというか。

とはいえ、自分にはお金もスキルもない状態ですから、辞める前に周囲に相談したんです。そこでWEBやSNSという業界を知り、大学の先輩で経営している人がいたので、外注で仕事をもらってやり始めました


質問 SNSマーケターの仕事とは、いきなり出来るものでしょうか?

SNSマーケティングの仕事は、SNSを利用して売れる仕組みを作るもので、アプリを作るみたいな仕事とは違いますのでやれましたね。就職して半年ぐらいで会社を辞めようと思い始めたんですが、元々WEBやSNSには興味があったので、そこから本やYouTubeで学びました。辞める前は、会社員と外注の仕事とを並行してやっていた時期もありました。


個人事業主から、会社を設立するまで

質問 設立当初の顧客は、どのように獲得していったのですか?

僕の場合、一つは元々のつながりがあった人たちですね。スイミングクラブや、通っていた飲食店などから仕事をもらいました。

もう一つは、なるべくビジネス交流会に行って提携先を探す、ということもしています。顧客を見つけるためではなくて、同業をしている協力先を見つけるんです。お互いに顧客を紹介しあう協力関係を築くことで、繁忙期で受けられない仕事や、不得意な分野の仕事を、融通し合うことができます。


質問 SNSマーケター・経営者として、あると優位なスキルやキャラクターはありますか?

突き詰めていくと「人間力」が大事なのかなと思います。商売は一人ではできないですし、求めてくれるお客様がいてはじめて成り立ちます。お客様が求めているのはスキルだけではなく、時間などの約束を守ること、礼儀正しさ、お客様目線で話ができるといった基本ができていることが前提で、それら全てが人間力につながると思います。

実務スキル的なことで言えば、マーケティング、ライティング、忍耐力などが思い浮かびますね。

人間力は20年間の競泳生活で身につけた

質問 この仕事をしていて楽しいことは?

やはり、お客様が困っていることを解決して感謝されたときです。

集客はできているけれども顧客管理に困っている人、というのが割と多いように思います。具体的には、お客さんは多いが、どの層に注力したら良いのか?と悩まれている方たちですね。顧客全員を特別扱いはできないので、濃いファンに特別な案内をすることで、効果的に売り上げを伸ばせるよう提案をしています。


質問 逆に苦労されていることは?

人材の確保です。SNSに接続して使うシステムを作れる人を探すのに苦労しています。SNS上にお客さんが買いたくなる導線を作り、それを設定構築できる人が足りていません。

あとは、法人化したばかりで自分が事務仕事に終始してしまって、営業活動に手が回らないといったことですね。


質問 会社を辞める際に周囲の人に相談したそうですが、その中でSNSマーケターの仕事を選んだ理由は?

理由は二つあります。一つは、事業として今を走っていくためのエンジンであるキャッシュを、WEBやSNSは作りやすい、儲かりやすいと考えたからです。そうして独立して仕事をするようになってからは、TwitterやYouTubeで色々な方がマーケティング手法などについて情報発信をしているのを勉強し、それを実際にお客さんに提案してみると反応がよくて、これはいけるなと手ごたえを感じました。僕の提案に対してお金を支払ってくれるというのは、悩みを解決しているからなので、やりながら確信を得ていきました。実際にやってみないと分からないですよ(笑)。

もう一つは、僕は静岡に住んでいるのですが、静岡にはいい商品やサービスが多いのに、それを伝えきれていない事業者が多いと考えたからです。就職して東京に2年間住んでいたんですが、東京と比べると静岡の人はアピールが苦手だなと。そこで、静岡に貢献したいと考えました。


質問 実際にやりはじめてから、事業として儲かりやすいと確信を持っていったという話ですが、仕事を辞めることに不安はありませんでしたか?

いえ、失敗したらまた会社員をやればいいと考えていました。あとは、父親が事業をしているから、自分もやってみようと思えた部分も大きいですね。

場所を問わず仕事ができるのも魅力!

WEB・SNSマーケティングの仕事の見通し

質問 独立して仕事をするようになった後に法人化もされましたが、今後の見通しを教えてください。

自分がこの仕事をしているのは、自分のスキルと世の中の需要がマッチしているからですが、その需要は今も身をもって感じています。だから、一つの事業の柱として、この仕事を引き続きやっていくのは変わりませんが、3年後だとか5年後も、今やっていることがメインの事業かは分かりません。
父親も色々な事業をやっていたので、自分も色々な事業をやってみたいと考えています。チャンスがあれば、色々チャレンジしていくつもりです。


質問 稼げますか?

稼げるけど不安定ですよ。良いか悪いかは、考え方によると思います。


質問 ご自身なりの生き残り戦略を教えてください。

クライアントに対し誠実であることは、常に心がけていきたいと考えています。

その上で、今後は掛け合わせで新たなビジネスチャンスを生み出していきたいですね。既存のものに、全く新しい何かを掛け合わせる。もはや単体で新しいものは、なかなか生み出されない時代ですから、市場にフィットする掛け合わせがないかを常に考えています。例えば最近NFTだとかChatGPTだとかが話題となっていますが、そういうのと何かを掛けあわせて新しいチャンスが生まれないかな?と。


質問 自分の人生で大切にしているは何でしょうか?

関わってくれた人を幸せにすること、そして誠実であることですね。
あとは、自分に正直になることや、直感を大切にすることも心がけています。そのときそう思っていたのに、後からやらなかったことを後悔するということが嫌なので。小さな後悔がたくさんあるので、とにかくやってみるようにしています。

勉強という名の旅行が好きです

橋口さんから、子ども達へのメッセージ

とにかくトライする。その一言ですね。

僕は、すぐに決断して恐れ知らずに進んでいくタイプに見えるかもしれませんが、どちらかと言えば慎重な性格なのです。それを見せないようにしているだけです。というのも、即断即決ではないと周囲からおいていかれて、後から後悔することになるので、とにかくやってみることを意識しています

それから、時代が変われば常識が変わるので、80代の祖父母の時代と今とで違うし、父母の時代ですら今と常識が違います。だから、暴力はいけないとか、嘘はいけないといった普遍的なこと以外は、親世代の言う「あたりまえ」を鵜呑みにせず、自由に考えればよいと思いますね。


橋口さん、ありがとうございました!

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